腕時計のエントロピー



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今回は少々理屈っぽいタイトルですね。

ずっと昔に「エントロピーの法則」という本を読んだ覚えがあるのですが、とても面白かった。

エントロピーとは、おもに熱力学とか統計力学などで用いられる用語みたいです。別の言い方をするなら、「再生可能な」エネルギーのことのようで、再生可能率が高いとエントロピー効率が良い、と云うことで、再生可能率が低いとエントロピー効率が悪い、というわけですね。

つまり、エントロピー効率が良いものは、エコなわけですね。さしずめ自然再生エネルギーは、よりエントロピー効率が良い、そしてエコなわけなんでしょう。

この地球上にある物質など、うまく利用すれば再成効率が高くなって、環境破壊に歯止めがかけられるというわけです。しかしながら、全てについて100%再生するのは不可能だそうで、必ず何かを利用した場合、たとえわずかでも消耗しているそうで、つまりは地球上の全ては限りなく再生不能に近づく、早い話が人類は地球を食い尽くすとこに確実に近づいているのだそうです。

自動車や電車が動き飛行機が飛びかい、様々な家電を生産し、消耗、消費することは、必ずエントロピーに関係があります。つまり人間が日々行ってりる消費活動はエントロピーを高めているわけです。

少々辛気臭い話になってしまいましたが、エコが叫ばれるようになってから、時々クォーツ時計と機械式の論議が出てきたりしました。ゼンマイを動力とする機械式時計の一方で、クォーツ時計はアナログやデジタルも含め「電気時計」と呼ぶことにします。

機械式時計と電気時計の論議をする場合、エコの観点からすると、どうも電気時計の分が悪い。機械式時計の方がよりエコで、自然に優しいなんて云われる傾向がある。

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理由はやはり電気時計は当然ながら電池を使用するからでしょう。電気時計はそれを使い続けた場合、定期的に電池を交換しなくてはなりませんから。そしてその使い古した電池は捨てなければならないわけです。

これに対し、機械式時計はゼンマイを動力としているわけですから、電池交換はもちろん不要です。ですから、どうしても電池交換を必要とする電気時計は、エコじゃない、と云われてしまう。それとゼンマイという動力の方が、なんというか、より分かり易いというか、懐古的な技術のような印象もあり、イメージとしてより人に優しいという感じがしてしまうのかもしれません。

しかしながら、私はずっと以前からこの議論にはかなり疑問を抱いてきました。電気時計が機械式時計に比べてエコの観点から効率が悪く、つまりエントロピー効率が悪いと云えるでしょうか?

電気を使うと、何となくエコじゃないと思われがちかもしれません。でも皆さん、電気時計はあの小さな電池で数年間も動作するのです。交換して捨てるにしろ、私は仕事がら分かりますが、あの小さな電池が数千個でも、ジャムの瓶くらいに入ってしまうほどのわずかな体積です。

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また、機械式時計を長く愛用されている方は良くお分かりと思いますが、電気時計に比べるとその精度を保つ為にメンテナンスも必要になります。とくにアンティーク時計などをご愛用の方は、何度もオーバーホールされた方も少なく無いと思います。大切にご使用になる方ほど、多くのメンテナンス費用をかけていることでしょう。

さらに、機械式時計の方が比較的高額だということは云うまでもありませんが、とくにスイスの高級腕時計は驚くほどの価格で、数百万、数千万円の時計も存在します。もちろんお金持ちがこのような高級時計を購入し愛用するのは、決して悪いことではありません。でも、高額所得者は、その所得を得る為に多くの生産活動をしているはずです。それはエントロピーに密接な関連があるはずなんです。

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よく勘違いしてしまうのは、たった一個の高級腕時計と数百個、数千個の安い価格帯の腕時計を比べ、大量生産品の方がより多くの金属や様々な材料を仕様しているので、高額品の方が、いわば地球に優しいと思ってしまうのです。

たったひとつの腕時計が大変な高額だということは、その職人さんに支払う報酬、この生産設備、販売のコスト、そしてその時計を購入するだけの所得のある人は、それに見合った生産活動をしているはずなんで、その他もろもろのことを鑑みると、きわめてエントロピー効率は悪い。つまり高額の高級腕時計たったひとつの為に地球の何かが確実に蝕まれているわけなんです。これは1個単位の製品で比べ、考えてみれば答えは明白なはずです。

さらに、メンテナンスにもコストがかかる。機械式時計の修理は、部品交換を要する場合も少なくなく、電気時計における電池交換よりもずっと費用もかかり、部品代も電池よりもかなり高いのが普通です。メンテナンスに支払われる部品代や職人さんに支払う報酬は、必ず所得として何モノかに消費され、何らかの生産活動を担うことになる、つまりエントロピーは失われる。もしこメンテナンスフリーだったら、これは無い。つまりエントロピーにはほとんど関係ありません。

高額の製品を大切に長く愛用するのは決して悪いことではありませんが、一方でその高額製品を生産、購入し、さらにメンテナンスには、多くのエントロピーが失われていると推測されます。一個単位で考えてみれば、明らかに低単価の製品のほうが、エントロピー効率は良いのです。

これは、数千円、数万円くらいの電気時計を愛用し続けるより、はるかにエントロピー効率が悪いと思われるのです。それほど、高額でもない機械式時計も、もちろんありますけど、図式はあまり変わりません。

高額商品を作る職人さんや、メンテナンスを担う職人さんが仕事により報酬を受け取るのは当然のことです。雇用や仕事が増えるのは、経済学の観点からすると、きわめて健全というか良いことなのです。でも一方で地球環境という観点からすると、逆になるかもしれない。つまり、実は何もしない方が地球には優しい、ということになりませんか・・・

話は変わりますが、太陽光パネルの寿命ってご存知ですか? これは永久に使用できるわけではなく、大体17年から20年くらいだそうですよ。寿命が来たとき、これは交換しなくてはならないのは当然で、古いモノは破棄しなくてはならない。昨今は再生可能エネルギーで導入が増えているのかもしれませんが、劇的に増えた場合、これから数十年後にこの破棄が大きな問題になるのではないかと推測されます。

家屋の屋根に敷き詰められた太陽光パネルは決して小さくはありません。時計の電池に換算すると、何十万個、いえ、何百万個分に相当するかもしれません。個人ではもちろん処分できません。

本当にこれが地球に優しいのでしょうか・・・?

私には良く分かりませんが、機械式時計や電気時計の議論も含めて、人間の様々な生産活動を続ける前提の上で、本当にエコな振る舞いとはなんなのか、本当に地球に優しい行動とはなんなのか、考え直して見る必要がある気がしてなりません。

少々理屈っぽい話をしてしまいましたが、私の願いは電気時計をそんなに悪者扱いにしないで欲しい、ということです。電池も水晶もこの地球上にあるモノの性質を理解し、利用している物です。つまり自然科学から生まれた製品なのですから。

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