振り子と棒テンプ 



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機械式の腕時計は、もちろん今でも時計店で頻繁に見ることができます。皆さんの中にも機械式の腕時計の愛用者がいらっしゃることでしょう。私も数モデルの機械式の腕時計を製作しています。

でも、機械式のクロック、つまり掛け時計とか置時計となると、最近はすっかり少なくなってしまいましたね。ゼンマイ式の機械式の掛け時計とか、まして錘(おもり)を動力とする柱時計なんか、ほとんど見かけなくなってしまいました。ちょっと残念な気持ちです。

さて、機械式の時計には必ず「脱進機」というメカニズムが搭載されているということを当ブログでもお話したことがあります。脱進機には様々な種類があるのですが、私が知る限りでも数十種類の脱進機があります。

この脱進機を、大きな意味で大別すると、「振り子式」と「棒テンプ式」の2種類に分けられます。機械式のクロックには必ず振り子か棒テンプが付いてます。中には腕時計のように小さいテンプが内部に組み込まれていて、外からは見えないようになっているモノもありますが、内部には必ず組み込まれているはずです。

この2種類のうち圧倒的に多いのは振り子式の時計ですね。雑貨屋さんやインテリアショップで、振り子の付いたクォーツ時計なんかが売られているのを見かけることもありますが、クォーツ式の時計の振り子は見せかけにのみに付いているわけで、本当は必要はありません。

でも、機械式の時計には必ず振り子が必要になります。振り子は脱進機と連動し、ゼンマイや錘のエネルギーの放出を制御し、正確な発振を維持する重要な役目を果たしています。

下の動画は、典型的な脱進機で、俗にアンクル式脱進機と呼ばれるものです。このガンギと呼ばれる回転している歯車に接触しているパレットの動きに連動しているのが振り子です。振り子の長さや重さなどで、ガンギ歯車の回転する速さを制御し、しいてはその時計の針の進みの速さを制御するもので、つまり時計の精度を決定するといっても過言ではありません。

さて、もうひとつ棒テンプと呼ばれるモノは、一般的にはほとんど見られません。恐らく、棒テンプが動いている時計を見たことがある方はきわめて稀でしょう。

でも、江戸時代の後期にたくさん製作された和時計は、大部分がこの方式です。時計本体の上部に、ものさしみたいな棒がセットされてまして、これが行ったり来たり動くわけです。2本セットされているのもありますが、これは二挺テンプなんて呼ばれ、夜と昼で入れ替わって動くのですが、これは不定時法と呼ばれるこの時代の日本独特の方式に関係しています。

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この棒テンプには、錘がセットされるようになっていて、さらに位置が変えられるようになっています。これは振り子式同様、錘の位置や重さで動きを制御し、発振を制御して精度をコントロールする仕組みになっているわけです。

下の動画は、棒テンプ式の動きを示したものです。こういった脱進機は一般的にヴァージ式脱進機(Verge Escapement)なんて呼ばれています。パレットが噛むガンギ車は、冠型歯車なんて呼ばれ、必ず奇数の歯数で作られてます。

さて、私はこの両方とも実際に製作し、動かしてみたことがありますが、それぞれ長所と欠点があります。精度としては振り子の等時性により、振り子式の方が正確です。棒テンプは反動によって行ったり来たりするのみです。ただ、振り子式に比べ棒テンプは省スペースで、時計本体の下部に振り子を揺らすためのスペースが不要なので、コンパクトに作り易いというメリットがありますね。その他様々な違いがありますが、機能としては、つまり時計本体の精度に関係するのは双方とも同じです。

ちなみに下の動画は、私が以前和時計をモチーフに木製で制作した和時計内部の脱進機です。冠型のガンギ車のかわりに、ピン型で制作してます。逆側に文字盤と針が付いています。

ところで、なぜ和時計の大部分が棒テンプ式の、つまりヴァージ式で作られ、振り子式はほとんど見られないのか、その理由ははっきり分かりませんが、おそらくはオランダから伝わったとされる時計がこの方式だったので、その後の日本の職人さんがこれをお手本に製作したのでしょうか。それとも日本の家屋の事情が関係しているのか、定かではありません。でも和時計はいいですね。日本独特の美を感じます。

最近、私は忙しさもあってこういった掛け時計など作っていないのですが、近い将来、また再び作りたいと思ってます。本当は、こういう機械式のクロックにとても魅力を感じていて、作りたくて仕方がないのですが・・・。

 

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