時計と歯車



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皆さん、「時計」と聞いてまず連想するものは、何でしょうか?

もちろん人それぞれ違うかもしれませんが、誰もが少なからず「歯車」のイメージを思い浮かべるのではないでしょうか。

よほどの時計マニアでもなければ時計の内部やムーブメントを直接見た経験はほとんど無いでしょうが、時計の専門雑誌などで、機械式時計のムーブメントなどが掲載されているのを見た方は少なくないでしょう。おそらくびっしりと歯車が並んでいるムーブメントの写真などを見た経験をお持ちだろうと思います。また、スケルトンの機械式時計だと、現物のムーブメントを見ることも出来ますよね。

機械式時計のムーブメントは大小さまざまな歯車で構成され、ちょっと大げさに云うと、そこには小さな宇宙が存在してるかのような錯覚さえ覚えます。

歯車の役割については皆さん何となくお分かりとは思います。

まずは動力エネルギーを伝えること。歯車同士がかみ合ってエネルギーを他の軸へ伝えるわけです機械式時計のパワー源はゼンマイです。そのパワーを生じる軸はもちろんひとつですから、そのパワーを他の軸(場所)へと伝える役目です

それから、動力の回転数を変える(制御する)という役割もあります。例えば30歯の歯車と60歯の歯車がかみ合って動作している場合、60歯の歯車が1回転する間に30歯の歯車は2回転する、つまり倍の速さで廻るわけです。これ以外にも色々な役割を担いながら時計の機能を構成します。

ところで、下図の歯車のイラスト(歯車1~3)をご覧下さい。皆さん、どの歯車がもっとも効率が良く、そして精度良く機能する歯車だと思いますか。ご自分でなにかメカトロモノを作った覚えのある方は実感としてお分かりになるのでは、と思うのですが。

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ごめんなさい、実は3つとも良くありません。3種類とも実質的には良い形状の歯車とはいえません。もちろん、ぜんぜん使い物にならないわけでもないんですが、とてもトラブルの起き易い、効率の悪い歯車です。

よくメカトロの雰囲気を演出するイラストなんかで、歯車2の形状の歯車の絵なんかを見かけることがありますが、見かけは確かにカワイイのですが、実質的にはどう考えても動作しない、なんてイラストも少なくありません。

下図の歯車をご覧下さい。これは現在実際に使われている歯車の中では非常に多く採用されている歯形のモノです。工作機械の中身や様々な機構モノにはとても良く使われております。この歯形を持つ歯車は「インボリュート歯車」と呼ばれます。

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また、下図の歯車の形状もご覧下さい。上記のインボリュート歯車の形状に似ておりますが、歯先の形状が少々丸みを帯びていて、滑らかな感じがします。現在、時計のムーブメントに使用されているのはこの形状の歯車がもっとも多く見受けられ、「サイクロイド歯車」と呼ばれています。

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私もこれまでクロックのムーブメントをたくさん作った経験上、このサイクロイド歯車が一番トラブルが少なくスムースに回転してくれると実感しています。

歯車が非常にきれいに噛み合い、余分なパワーを使わずにスムースに軽いタッチで廻るというのは、そのムーブメントの精度や耐久性など、ムーブメントにとってもっとも重要な要素と云っても過言ではありません。

歯車は、人間にとって云わば血液のような役割を果たしていると云ってもいいかもしれません。

 

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