K’s 回顧秘宝時計展 Part.1



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私は腕時計を作り始めてかれこれ30年近くになるのですけど、この間、実にたくさんの種類の時計を作ってきたのは云うまでもありません。

種類というと、単にデザインのことだと思ってしまうでしょうが、その技法、素材、など等数々のトライをしてきました。その時代や市場の潮流や、時計作家としての私自身の変化もあります。

そこで、手元に残っているものに限りますが、私が過去にどんな時計を作ってきたか、このコーナーでご紹介させていただこうと思います。この中には、もちろん実際に販売して人気のあった製品もありますが、試作は作ったけれどリリースにまでは至らなかったモノなどをご紹介したいと思います。当然、失敗作もあります。

まずは、何といっても私が始めて製作し、世に送り出した手作り腕時計、「ペーパー・クラト・ウォッチ」をご紹介しなくてはと思います。そう、紙製の腕時計です。

DG

当時作っていたペーパー・クラフトウォッチです

 

現物をご存じない方は、「ホントに紙なの?」と思われるでしょう。ムーブメントなど内部の部品はもちろん紙ではありません。それとフロントレンズ、裏蓋、バックル以外は、ホントに紙製です。

紙といってもいろいろあるのですが、これに使用しているのは「シン」と呼ばれる硬質の紙で、ファックスのロール・ペーパーなどの中心に使われているモノです。これをプレスで時計の形に抜き、何枚か張り合わせます。これでだいぶ強度が増します。

P.C.Watch

でもやっぱり紙ですから汗や雨粒など水分には弱い。紙は繊維質ですから、レジン剤を塗りこみます。これが浸み込んで、FRP化するわけで、これによってさらに強度も増し、汗などの水分にも強くなります。

バンドももちろん紙です。比較的強度のある和紙やウエブロン・カラーという合紙を使用しました。こちらもレジン剤を浸み込ませ、裏側には合皮を貼り付け、汗を防ぐようにしました。

CB

簡単に説明しましたが、むろんここまで来るには数々の失敗、試行錯誤がありました。着想から製品化するまで1年以上かかりました。

これをリリースした当時は大反響を頂き、製作に終われる日々が続きました。この時計は、「手作り」つまりHand Madeというよりクラフトという感じなので、ハンド・クラフト・ウォッチというサブ タイトルにし、ブランドもCrafzと名付けました。

そうです、JHAの直営店のお店の名前はここから「Crafz」と命名したのです。

この時計を作って学んだことは、作る素材によって同じデザインでもその製品はまったく違う生き物に生き返る、ということです。平凡なデザインでも、その素材がまったく違うテイストをかもし出す。

はっきり云って、この紙製の時計の製作は大変でした。特にシンナーの強い匂いを放つレジン剤を使うので、工房がシンナー臭で充満してしまいます。窓を開け放って製作に追われたのを覚えています。

そんなこともあり、このペーパークラフト・ウォッチは発売から1年半くらいで販売を終えました。

その間、私は自己流で彫金の様々なテクニックを学び、金属製の手作り時計の製作を摸索していました。いずれにしろ、この紙製の腕時計が、手作り時計の第一歩であり、私にとって大きな足がかりになったことは間違いありません。

尚、このペーパー・クラフト・ウォッチは、根強いファンの方々のご要望もあり、当時の技法やデザインとは若干違いますが、現在でも販売しております。

 

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