廃墟と時計



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私はこのブログで幾つかの廃墟の話をさせてもらいました。お読みくださっている方は、「けっこう廃墟好きなんだね」とか思われたかもしれませんし、私の廃墟文なんか読んで、ちょっとKSさんは中二病っぽいのかな、だけどそれだから、その歳でアニメ好きなんじゃないか、なんて感じたかもしれませんね。

まァ、当たらずとも遠からじ、ということかもしれません・・・

こんな私は時計を作り始める前から廃墟に魅了されていたわけですが、もう30年間近く時計を作り続けているわけで、それでは自分の時計作りにおいて、この廃墟から影響を受けてきたかどうかと云えば、かなり影響を受けてきたと自覚しています。私が作って来た作品群の多くは、廃墟の影響を色濃く反映していると思いますし、すでにそのことに気づいているユーザーさんも、いらっしゃるかもしれません。

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私の作品のカテゴリーのひとつにSTEAMPUNKがありますが、特にここに属する時計が廃墟の影響を受けている作品群でしょうが、その他の作品群も少なからず影響があると思います。

このカテゴリーは以前は「ロストフューチャー」と名付けていました。これを始めた頃はまだ日本ではスチームパンクという言葉がさほど認知されていなかったせいもあります。

ロストフューチャーとは近未来SFなんかの場面でよく出てくるような、荒廃した社会といか、いわゆるディストピアでしょうかね。そんなコンセプトで命名したわけです。

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廃墟は、もちろん最後は「見捨てられた」建造物なわけで、かなり膨大な時間が経過したもので、自然が侵食し、朽ちて行く過程なわけです。

ですから、どことなく哀しく、寂寥感がある。私はその雰囲気や感性を時計に封じ込められれば、と思いました。アンティーク時計も当然、永い時間が経過した古い逸品なわけですが、どこかに共通点があるかもしれません。

ただアンティークだろうが現行品であろうが、あまりに「きらびやかで」、ゴージャス然としているモノを私は、あまり好きではない。建造物でも装身具でも、どこか控えめなたたずまいで、あまり自らの存在を傲慢に主張し過ぎない。デザイン的にある程度の新鮮さがあったとしても、過度に奇抜過ぎず、ユニークであってもどことなく気品が漂い、どこか哀しげで、できれば逆説的な美しさを秘めている、そんな製品こそ私が作りたい時計です。

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私の作品は真鍮製が多いですが、それも黒染めした作品が多いですね。黒染めしたくなるのも、どちらかというとあまりに主張過ぎず、あまり前には出ず、ひっそりと静かなたたずまいの雰囲気にしたい、そんな想いが反映しているのかもしれません。

一瞬に目立てば良いのではなく、私は私の時計を愛用してくださる方に、自分の一部のような感覚で、出来るだけ永くご愛用していただきたい、そのことがもっとも大きな願いなのです。ですから腕に装着したときのフィット感とか、付け心地も重要な要素です。それはある程度、時計のデザインに制約を課すことになりますが、それと向き合うのも時計作家の役目ではないかと思うのです。

廃墟が徐々に朽ちて行く様子は、いわゆる「時間の経過」を感じられるものです。それは人間とて同様。使えば使うほど味が出てきて、それは人間が年を経るごとに奥行きが増して行けるように。

やがて、全ての人間は滅びることを免れない。

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私が作りたいのは、うわべだけのきれいごととは違う、その裏側に、哀しさや、絶望や、それ故その美しさが作品の奥に隠され、憂いを帯びたモノ。そんな作品が私の理想の時計と云えるかもしれません。だから私は限りなく「人間に近い」というか、人間が抱えている内面の矛盾や本質に迫る作品を作りたい。

その想いが、本当に作品に反映されているかどうか、私が意図する製品になっているかどうか・・・

その真の評価をして下さるのは、ユーザーさんでしかありません。

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